2026年9月30日

ボディスキャンという方法
夜になると痛みが強くなる。痛くて眠れない。
帯状疱疹になって、夜になるとズキズキ、ピリピリ。
布団に入って静かになると、昼間よりも痛みが気になって仕方がない。
「また痛くなってきた」
「ここが痛い」
「さっきより強くなった気がする」
気づけば、意識がずっと痛いところに向いている。
そんな経験はないでしょうか。
これは帯状疱疹に限ったことではありません。
腰が痛い、肩や首が痛い、手足がしびれる。昼間はそれほど気にならなかったのに、夜になって静かになると、急にその場所ばかりが気になってしまう。そんな経験のある方は少なくないと思います。
痛みがある場所に注意が向くのは、とても自然なことです。
そもそも痛みは、私たちの身体を守るための「警報」のようなものです。
だから脳は、痛みを「無視してはいけない大切な情報」として優先的に処理します。
けれど、痛みが長く続くと、
痛い → 気になる → さらに注意を向ける → ますます痛みが気になる
という状態になることがあります。
一度見つけてしまった壁や天井のシミが、その後ずっと気になってしまうような感じです。
特に夜は、仕事や会話など昼間にあった刺激が少なくなるため、痛みに意識が集中しやすくなります。
そこで試してみたいのが、マインドフルネスで行われる方法のひとつ、ボディスキャン です。
痛いところではなく、まず指先から
布団の中で楽な姿勢になってみましょう。
目を閉じて、まず右手の親指に意識を向けます。
親指は温かいでしょうか。
冷たいでしょうか。
布団に触れている感覚はありますか。
次は人差し指。
中指、薬指、小指……。
一本一本、ゆっくりと意識を移していきます。
そこから手のひら、手首、前腕、肘、肩へ。
反対側の腕にも移り、足の指、足の裏、踵、ふくらはぎへ。
まるで自分の身体の輪郭を、内側からゆっくりとなぞっていくように。
「何かを感じなくてはいけない」と頑張る必要はありません。
温かい。
冷たい。
布団に触れている。
よくわからない。
それで十分です。
痛みを「消す」のではなく、意識を広げてみる
ここで大切なのは、ボディスキャンを痛みを消すための技にしすぎないことです。
「痛みを考えないようにしよう」と頑張ると、かえって痛みが気になってしまうことがあります。
そうではなく、
「痛みはある。でも、身体には痛み以外の感覚もある」
ということに気づいてみる。
帯状疱疹で脇腹がズキズキしていても、腰が痛くて眠れない夜でも、手の指先には布団の柔らかさを感じている。
足の裏は温かい。
呼吸をすると、お腹がゆっくり上下している。
痛みにズームアップしていたカメラを、少しずつ引いていくようなイメージです。
痛みだけでいっぱいだった身体が、
「痛みのある身体」から、「いろいろな感覚を持った身体」へ戻っていく。
私は、ボディスキャンの大切なところはここにあると思っています。
これもマインドフルネス
マインドフルネスというと、座禅を組んで瞑想するようなものを想像するかもしれません。
でも、もっと日常的なもので構いません。
以前ご紹介した、一粒のレーズンを時間をかけて味わうこともそう。
空を見上げて、流れていく雲を眺めることもそう。
そして、自分の指先から身体をゆっくり感じていくことも、そのひとつです。
共通しているのは、
「今、この瞬間に起きていることに気づく」
ということ。
痛みを否定するわけでも、無理に追い払うわけでもありません。
痛みがあれば、「痛いな」と気づく。
そしてまた、指先や足先、呼吸など、身体のほかの感覚にも意識を広げてみる。
注意が痛みに戻ってしまっても大丈夫です。
気づいたら、また身体全体へ意識を広げていけばいい。
それを何度繰り返しても構いません。
今夜、痛みが気になったら
眠ろう、眠ろうと頑張る必要もありません。
「ちょっと指先から身体を一周してみようかな」
そのくらいで十分です。
痛みそのものをすぐにゼロにすることは難しくても、痛みと自分との距離は、少し変えられるかもしれません。
痛みだけにスポットライトが当たっている夜。
その光を少し広げて、自分の身体全体を照らしてみる。
そんな夜の過ごし方があってもよいのではないでしょうか。