――「今ここ」に戻る、マインドフルネスの練習|大井町|痛みの専門医なら大井町ペインクリニック|麻酔科・ペインクリニック内科

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――「今ここ」に戻る、マインドフルネスの練習

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2026年8月26日

――「今ここ」に戻る、マインドフルネスの練習

以前のコラムで、少し離れたところから全体を見渡す「鳥の目」と、今いる場所から空を見上げる「人の目」についてお伝えしました。

痛みに心を奪われているときも、痛みだけに意識を集中させるのではなく、

「今日は少し眠れた」
「昨日より歩けた」
「空がきれいだと感じた」

そんな、痛み以外の感覚に気づくことが大切です。

今回は、そのための方法のひとつである「マインドフルネス」について、もう少し身近なところから考えてみます。

マインドフルネスは、痛みを消す治療?

マインドフルネスとは、今この瞬間に起きていることに、良い・悪いと決めつけず注意を向けることです。

痛みに対して行うときも、「痛くないと思い込む」「痛みを我慢する」ということではありません。

痛みがあることを認めながら、

「ズキズキしている」
「熱く感じる」
「痛みが強くなったり、弱くなったりしている」

と、少し距離を置いて観察します。

痛みを敵として追い払おうとするほど、かえって意識が痛みに縛られてしまうことがあります。マインドフルネスは、痛みそのものを直接なくす魔法ではありませんが、痛みへの不安や緊張、反射的なとらわれを和らげ、痛みとの付き合い方を整える助けになります。

これは薬や神経ブロックなどの治療に置き換わるものではなく、治療と組み合わせながら、痛みに支配されすぎないための練習です。

「レーズン一粒に5分⁉︎」

マインドフルネスの代表的なトレーニングに、「レーズン・エクササイズ」があります。

やることは、とても単純です。

レーズンを一粒、5分ほどかけて観察し、ゆっくり食べます。

そう聞いて、

「そんなの、やってられない」
「レーズン一粒に5分なんて、効率が悪すぎる」

と思った方もいるかもしれません。

でも、もしかすると、その反応こそが「マインドフルレス」――今この瞬間から意識が離れ、次のことばかりを急いでいる状態――なのかもしれません。

私たちは、いつも“ながら”で生きている

スマートフォンを見ながら食事をして、考えごとをしながら歩き、次の予定を気にしながら目の前の仕事をこなす。

私たちの毎日は、たくさんの“ながら”でできています。

身体はここにあっても、意識は過去の後悔や未来の心配へ飛んでいる。気づかないうちに、「今ここ」の感覚がどこかへ行ってしまいます。

慢性的な痛みがあると、

「また強くなるのではないか」
「このまま治らないのではないか」

と、まだ起きていない未来にまで苦しさが広がることがあります。

だからこそ、一度「今ここ」に戻る練習が役立ちます。

一粒のレーズンを、五感で味わう

まず、手のひらにレーズンを一粒のせます。

すぐに口へ運ばず、色や形、表面のしわをよく見てみましょう。指で触れたときの硬さや粘り、鼻に近づけたときの香りにも注意を向けます。

口に入れても、すぐには噛みません。

舌に触れる感覚や、口の中に広がる味を確かめます。ゆっくり噛み、食感や香りの変化を感じ、最後に飲み込む感覚まで追いかけてみます。

普段なら数秒で食べ終えてしまう一粒にも、意識を向けると驚くほど多くの感覚があります。

途中で別のことを考えてしまっても、失敗ではありません。

「あ、考えごとをしていた」と気づいたら、もう一度レーズンの感覚へ戻ります。レーズンは意識を戻す基点として、この「気づいて、戻る」こと自体がトレーニングです。

5分間の“遠回り”が、心を整える

レーズン一粒に5分かけることを、「退屈」「もったいない」と感じるかもしれません。

それは、私たちが普段どれほど「効率第一」「スピード重視」で動いているかの表れでもあります。

もちろん、毎日の食事をすべて5分かけて一口ずつ食べる必要はありません。レーズンが苦手なら、チョコレートや小さな果物などでも構いません。

大切なのは、食べ物そのものではなく、ひとつのことに注意を向け、今の感覚をそのまま受け取ることです。

前回は、空に浮かぶ雲を眺めるように、痛みや気持ちを少し離れたところから見つめてみました。

今回は反対に、小さな一粒へぐっと近づき、今この瞬間を丁寧に感じてみます。

広く眺める「鳥の目」と、目の前の感覚を確かめる「人の目」。どちらも、痛みだけに占領されていた意識を、少しずつ広い世界へ戻してくれます。

「レーズン一粒に5分なんて」と思ったときこそ、立ち止まるチャンスかもしれません。

一粒に向き合う5分間が、心を整え、痛みとの距離を少し変えるきっかけになるかもしれません。

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